品川隆幸の古今東西(32) 復活その一 ~念願の工場新築1~

大きな目標

 

この「品川隆幸の古今東西」も2014年の8月で一区切りしていた。

あれからもう1年も経っている。その間私の方は、新年度になって、本業の(株)シナガワの新しい目標を、社内全体で作成していた。

その中で、予てからの懸案事項であった新工場の建設を、一番大きな目標として掲げた。


これまで操業していた本社工場は、2014年迄30年間、増改築を繰り返しながら稼働していた。

しかし長い年月の間に、機械が溢れかえり、人や物が移動する際に危険な状態になってしまった。

これは(株)シナガワの仕事が発展した結果であるので、ある意味喜ばしいことではあるが、このまま放置しておくわけにはいかない。

何か事故が起こってからでは遅い。


しかし、私は新工場の建築は、次の後継者の仕事と決めていた。

なぜなら、次の世代がどんな仕事をしたいかは、彼らの自由に任せたい。したがって、新工場はそんな新しい仕事に合わせて作るべきだと思っていたからだ。

息子からの嘆願

 

ところが、私の知らないところで二人の息子(現在は(株)シナガワの専務と本部長)は、2年前より中古物件を探していたようだった。

そして、なんとか良い物件を探してオヤジを説得しようと思っていたようだった。

そんなことはつゆ知らず、私には新工場はどんな風にしたいかなど、全くイメージを持てずにいた。

 

ある日、息子二人がやってきて、「新工場の土地の取得のために、銀行から融資を受けたい。

そのために社長の印鑑を押してほしい。」と頼みに来た。返済は自分たちでするからとのことだった。

私はすかさず、「それはお前たち二人でやれば良い。」と答えた。

 

しかし息子たちは、「自分たちでは銀行に対してまだ信用がない。

だから社長の信用があるうちに借入して新工場の建築に着手したい。」と言った。

これには金庫番の総務部長もずいぶん前から後押しをしていたようだった。

 

総務部長もゴーサインを出しているならと、銀行に相談に行ったら、二つ返事で融資の話がまとまった。

そして3行で借入計画を描いた。

これが今から2年前の2013年の夏頃のことだった。

 

早速私の友人で、不動産会社を営む社長に、どこか良い土地はないかと相談してみた。

するとすぐにいくつか良い土地があるからと、現地を案内してくれた。

しかしなぜか、ピンとくる場所はその中には無かった。

普段なら即断即決する私だが、この時はなぜか決心がつかず、予算計画も立てることができずにいた。

 

通常ならこういう場合まずは、

・土地の入手

・銀行からの借入

・建物の設計

という手順で進めると思っていた。

 

これまで30年間使用してきた工場は、敷地70坪土地に5階建の建物を建てていた。

延べ300坪の床面積だった。

ここから次はどんな工場を建てれば良いのか?まったくそのイメージがつかめ無かった。

 

イメージが湧かないのは、目的が曖昧だからだ

 

しかし私は、大事な要素を忘れていることに気がついた。

きっかけは息子二人の意見だった。

 

「今の5階建の工場は、常に人や物が上下に移動しなくちゃいけないから、とても効率が悪い。危険も多い。

だから、今の5階建の工場を、そのまま横に倒した状態の、平面で300坪の土地があれば良いなと思う。

これだと1階建でも十分いける。けれど、将来のことも考えて2階建にしておけば、拡張性も十分ある。

これでどうだろう?」

 

なるほどそうか。300坪の土地があれば十分いけると、ようやく私にも具体的なイメージが湧いてきた。

そうと決まれば、早速土地探しだ!

こうありたいという目標が決まったら、俄然やる気も湧き、建物内のレイアウトもはっきり脳裏に浮かんできた。

 

私の考え方の順番が逆であった。

新しい工場これから何をするのか?

それにはどれぐらいの広さが必要か?

そんなやりたいことのイメージが無かったから、土地のイメージも、レイアウトのイメージも湧かなかったのだ。

やはり、すべきことを明確にするのが一番最初の作業であることを痛感した。

 

私は早速、思い描く工場内のレイアウトのラフスケッチを描き始めた。

すると、駐車場は広くとりたい等、どんどん具体的なイメージが湧いてくる。

そうやってイメージを実際に紙に描いてみると、やはり土地は300坪は必要になってくる。

 

こうして、息子二人と一緒に、次はどんな仕事をやりたいか、そのためにはどんな設備が必要か、それにはどんなレイアウトが良いのか、等。イメージを膨らませながら、話し合った。

 

この作業は、これまで私が何度も土地の入手や建物の建築を行ってきた経験が役に立った。

そしてそれを息子達と共同作業で行うことで、彼らにも良い勉強になったと思う。

仕事を作り出すには、その環境づくりが大事である。

それを実地で教える機会を得ることができた。

 


土地探しは見合いと同じ。

 

自分たちでイメージ作りが出来上がった時点で、再度不動産会社の社長に相談に行った。

すると候補地はすぐに2~3出てきた。

そして予算計画も、思いもしない破格の条件で、土地代と建築費込みで2億円という提案まで出してもらった。これには正直驚いた。

 

土地の詳細を聞いてみると、決して悪い土地ではない。立地は準工地帯で近隣ともめる心配もなし。

方角は南向き。

おまけに土地は無償で提供するから、建物を2億円で建てさせてほしいとのことだった。

 

しかしこれには理由があって、この土地では過去に人身事故で人が亡くなっているらしい。

そのためここはなかなか買い手がつかない物件だったそうだ。

この土地は面積が350坪。

それを坪単価50万円で売りに出していたが、まったく買い手がつかなかったそうだ。

 

この条件を息子と総務部長に報告したところ、即答で却下された。

実は数日前に別に300坪の土地を見つけていて、そこならいけそうだと目星をつけていたらしい。

 

そこで再度不動産会社の社長にもその旨を伝えたら、

「なるほど、そうか!これはまるで、その300坪がミスユニバースで、こっちの350坪は河内のおばちゃんやなぁ。」と言って笑った。

社長のさらっと口から出たユーモアに、思わず二人で大笑いした。

 

せっかくの有難い提案だったが、こちらの希望を通させてもらった。

金額にしてざっと1億円もの違いが出てくるが、それでも気に入った土地で愛着持って新工場を建てた方が、断然気分がいい。

そんなわけで、息子達が見つけてきた土地に決めた。

 

土地とは不思議なもので、縁やら相性やらがある気がする。

お見合い相手のようなもので、気に入れば即決。気に入らなければ、たとえどんなに器量好しでも、いらないものはいらない。

 

後日談だが、くだんの社長からお礼と報告を頂いた。

なんでも私が断ってすぐ、あの曰くつきの土地が社長の言い値で売れたそうだ。

しかも相手は事故の一件を気にとめるでもなく、「今の大阪の繁栄は戦の結果だから、過去を遡ればそこいら中屍だらけだ。

かえってゲンがええ。」とまで言ったそうだ。

物事は考えようだなと感心した。

 

さて、新工場の土地だが、元の工場からさほど離れていない場所に見つかった。

大通りから一筋奥まっているので、車の通行が少なく出入りや荷物の積み下ろしが安全だ。

方角は南向きで間口が広い。

付近には背の高い建物がなく、日光を遮られることもなく、明るい。土地種目は準工地域だから近隣の住民に気を使うこともなく、そして静かだ。申し分のない環境だと思う。

 

そして2014年2月、土地の契約と登記を済ませた。

その後すぐ、建築図面の作成に取り掛かった。

基本レイアウトは前工場を参考にしたため、意外に早く設計担当者から2階建の建築パースが出来上がってきた。

しかしそれでは何かが物足りなかった。納得いかないものを建てたくはないので、ここからが勝負だった。

建築士と喧々諤々のやりとりが続いた。

 

>>>次回へ続く....

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